HIROSE COLLECTION

Artists

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stanley brouwn | スタンリー ブラウン

1935年旧オランダ領スリナムで生まれる。1957年以来アムステルダムに在住。

1960年頃より、道路に敷いた白紙の上を通行人に歩かせて、その痕跡を作品として発表したり、通行人にある場所に行く道順を尋ねて、それを白紙に描いてもらい其れを作品として発表したりした。もちろん説明だけで描いてくれないで、白紙のままというのもあったが、それも作品として4点セットで発表した。作家の意思なる手を使わないという表現の試みであるが、他にもドリッピングをしたり、ドリルで描いたりした作家はいたが、作家の意思が手に伝わる事で制作されるという事からは免れる事はできなかった。ブラウンの手法では全く作家の手から離れた所で作品が成り立っており、その意味ではブラウンは最もこの事で成功したと思われる。
1970年代からは距離を作品として取り上げる。距離は古は体を使って表現されていた。ブラウンはこの体から発する距離と世界中で使われ近代工業の発展に多いに貢献したと思われるcm、m、kmなどの無機質な距離との関係に注目して作品を発表し、以来現在までその作業は続いている。初期のドローイング、カードから最近は距離の実体化を計り様々な材料を試みている。

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作品

1、This way brown  こっちですよ、ブラウンさん 1964年
  紙にインク
  4フレーム、各24.5 x 32 cm

 初期の作品を手に入れる事が出来た。加藤唐九郎の茶碗と交換? 妻の怖い顔が目に浮かぶ。
 ただの通行人が描いたスケッチが芸術作品になるという画期的な作品。芸術の可能性を大きく広げた。

2、1 step   一歩 1970年
  紙にインク
  100 x 75 cm

 距離の概念に食い込んだ初期の作品。ただの一本の線のドローイング。しかしブラウンという精神主体が描いたという思いが 心に強く響いてくる。一歩は距離だけでは無く、我々に一歩がどの方向に踏み出すかにより、その後の人生が変わったかもし れないという想像力を働かせる。購入した画廊コンラッド・フィッシャーからブラウンの作品が売れたのは始めてだと言われ た。

3、4356mm(5 steps)  5歩 1975年
 紙にインク
 5フレーム、各126 x 45.6 cm

 一歩から歩数が増え重層化される。同時に様々の異なった場所での歩行と歩数の計算が行われ、地平的更に時間的要素が加味 される。

4、100 Km card-index box 100Km カード インデックス ボックス   1976年
 スチールボックスの中のカードに鉛筆でタイプ
 15.5 x 20 x 40 cm

 初期より距離をカード化する試みは行われていたが、この頃よりカードインデックスボックスを使用しての作品が展開される ようになる。1枚のカードに1センチから100センチまでタイプされ、メートルに対するその割合がタイプされる。100 0枚のカード。

5、10x10Km card-index box      10x10Km カード インデックス ボックス 1976年
 スチールボックスの中のカードに鉛筆でタイプ
 15.5 x 20 x 40 cm

 上と同じタイプのカードが1000枚。10キロ毎に区切られる。

6、10 steps on 1 Km card-index box   1Kmの上の10歩 カード インデックス ボックス 1976年
 スチールボックスの中のカードに鉛筆でタイプ
 21 x 26 x 40 cm

 1枚のカードに10センチづつのドローイングが10本。計1メートル。その上にブラウンの一歩づつが10歩きざまれる。1000枚のカードの中の10歩。

7、1 step 1:1, on 1m 1:1 card-index box   1歩 1:1 対 1m 1:1   カード インデックス ボックス 1977年
 スチールボックスの中のカードに鉛筆でタイプ
 15.5 x 20 x 40 cm

 1000枚のカード。1枚づつに1mmの字のタイプと1mmの長さのドローイング。858枚目ぐらいの所に区切りがあり、これ が1ステップ。

8、1 step 1:10, on 1m 1:1     1歩 1:10, 対 1m 1:1    1977年
 紙にインクでタイプ
 21 x 24.5 cm

 10センチのドローイングが10本引いてあり、10本目にチェックが入っている。その下に1cm=1m 1:100から始まり100cm=1m  1:1 まで続くタイプが打ってあり、8cmにチェックが入っている。

9、1 foot, 1x1 foot       1歩 1x1 歩  1989年
 アルミニウム
 26 x 62 cm

 1足の長さをアルミニウムの平たい棒で表現、もう一つ1足の長さでアルミニウムの正方形の板を作り、長さを平面で表現。

10、1 foot, 2 feet, 3 feet       1歩 2歩 3歩     1989年
 アルミニウム
 1 x 176 cm

 1足の長さのアルミニウムの棒、1足の長さのアルミニウムの棒2本、1足の長さのアルミニウムの棒3本で足の長さを表現。

11、1x1 foot, 1/2x1/2 foot, 1/4x1/4 foot, 1/8x1/8 foot     1x1歩、1/2x1/2歩、1/4x1/4歩、1/8x1/8歩 1989年
 アルミニウム
 26 x 26 cm

 1足の長さを正方形にしたアルミニウムの板の上に、1/2足の長さを正方形に作ったアルミニウムの板を載せ、その上に1/4足四 方のアルミニウム板を載せ、更にその上に1/8足四方のアルミニウム板が載った作品。
 徹底して自らの体から発した距離を目に見える形で我々に見せる。物質化した距離がそこにあり、ブラウンの精神がそこにある。

ある晩、電話が1時間おきに鳴り続けた。朝電話を取り「もしもし」と話しかけると、間を置いて低い声で「スタンリー ブラウン」。英語がやや苦手で良く理解できなかったら、数日おいて手紙が来た。案内状の葉書をたくさん送って欲しいという事だったらしい。30枚ぐらいの葉書と会場の写真を送った。