HIROSE COLLECTION

Artists

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Tony Cragg|トニー・クラッグ

1949年イギリスのリヴァプールにて誕生。

 

 最初は科学に興味を惹かれるが、1969年グロスターシャー美術校に入学、1年後ロンドンのウィンブルドン美術学校に入学し、1973年に卒業する。更にロンドンの王立美術学校に入学し1977年に卒業する。

 

 在学中様々な実験を行っていたが、1978年リッスンギャラリーで個展を行い「新しい石ニュートンの色調」と題してプラスチックを使った作品を発表し鮮烈なデビューを飾った。手を加えない廃棄物であるプラスチックのそのままの色彩は斬新な感覚を人々に与え、高い評価を得た。

 

 その後、次々とプラスチックの作品を発表し、更に廃棄物である木、石、鉄などの工業製品の廃棄物などを使い様々な形状の作品を発表していった。次に取り組んだのは既存の廃棄物ではなく、様々な素材を使い自らが作りあげた形状の作品の発表であった。

 

 トニー・クラッグは新しい形を追求した彫刻家と言われるが、その形は風景であり、身近な家庭用品であり、地形であり、人間でありと既存の彫刻とは一種変わった形が追求されているが、更に科学用品、海底の生き物、存在しない創作上の形と変遷していった。

 

 形とは人間にとって何かが問われているような気もする。

 

 1988年ターナー賞を受賞し、現在はデュセルドルフのクンストアカデミーの校長を務める。

 

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Three Coloured Objects 三色のオブジェ
1980年作
Mixed material
10m x 3.8m
 
 この作品はデビュー間もないトニー・クラッグが1980年にドイツ、デュッセルドルフの画廊コンラッドフィッシャーで発表したものであるが、かんらん舎の大谷さんが見つけてきてくれて、写真を見ていっぺんに気に入り購入を決めた。物の底辺とも言える汚い廃棄物である泥の付いたプラスチックを使っているが、並べたところを撮った写真は本当にきれいだった。しばらくして段ボールの箱に無造作に入れられて送ってきたが、やはり一つ一つは汚かった。しかし並べるとなんともきれいで、厳しいアートの作品と化けた。
 
 
 
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Burg 城砦
1989年制作
Material:Objects covered with plastic chips
213x264x220(h)cm
 
 この作品を東京のかんらん舎でトニー・クラッグが制作する場面に立ち会った。彼は忙しく各部品をあっちへ置いたりこっちへ置いたり、置いては考えて、かなり時間をかけて完成させた。作家の制作場面に遭遇した貴重な体験だった。
 彼はやせた小柄な体型だが、制作時はパワフルに動きまわる。終わった後も、かんらん舎の大谷氏らと口から泡を吹いてしゃべっていた。残念ながら英語はよくは分からないので何をしゃべっているのかは、理解できなかった。
 購入を決めて帰ったが、数日後には他の購入希望者があったらしい。わずかな差であった。


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 Manhattan マンハッタン 1986年
材料:木、金属
大きさ:203 X 71 cm

この作品はニューヨークのマリアングッドマン ギャラリーで購入したものである。マリアングッドマンは物静かな婦人で机に対面で座ると1枚づつ作品の写真を見せてこちらの反応をじっと見る。関心がないと見ると次の写真を見せる。まるでどれだけ作品を見る力があるか試されているようだ。この作品に購入を決めるとにっこりと笑った。


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Minster  寺院 1990年
材料:混合した材料によって作られた4つの塔
大きさ:各 244 x 71 cm 径
      232 x 79 cm 径
      205 x 50 cm 径
      157 x 41 cm 径

この作品はかんらん舎において作られた作品であるが、イギリスのサッチ・コレクションにも同様の作品が展示してあった。がしかし、こちらの方がいいと一人密かに思っている。実にどっしりとして重厚でトニーのパワーが感じられる。

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Selfportrate and sculptor  1981年
Material: multicolored mixed material
Dimension: 200 x 160cm(man 175 x 65cm)

かんらん舎より購入。経年劣化でプラスチックが割れ、修復に苦労する。両面テープで留めているが、会期中にポロポロと落ちてくる。横の絵は来館者はクラッグが描いたのかと思うようだが、拾って来たゴミ。これがユーモラスで面白い。